2022/10/12 18:05
福岡発の人工衛星 ロケット打ち上げ失敗も 込められた“職人ワザ”と中小企業の思い
暮らし
2022/10/12 20:55
福岡のベンチャー企業が開発した小型の人工衛星が12日、打ち上げに臨みました。
この衛星は福岡の企業が共同で開発、まさにチーム福岡で生まれた衛星です。
世界トップクラスの技術が詰め込まれた衛星の実力とは?
12日朝、福岡市内に設けられたパブリックビューイング会場。
服部知事など100人以上が見つめるモニターに映し出されていたのは、JAXAの固体燃料ロケット『イプシロンロケット6号機』です。
このロケットには、福岡のベンチャー企業が地元企業とともに作り上げた小型衛星2機が搭載されています。
午前9時50分過ぎ。
◆打ち上げの瞬間映像
「3、2、1、0」
福岡企業の夢ものせたロケットが打ち上げられました。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「ようやくスタートなので、そのドキドキが勝っていますね」
こう話すのは小型衛星を開発したQPS研究所の大西俊輔社長です。
*********************
打ち上げ6日前、訪れたのは大西社長が率いるベンチャー企業QPS研究所の本社(福岡市)です。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「これがちょうど6分の1スケールの模型で、ここがパラボラアンテナで、ここから電波が出て、地上から跳ね返ったものを受信して画像にする」
九州大学出身でエンジニアでもある大西社長に見せてもらったのは、今回、ロケットに乗せられた人工衛星の模型です。
実際の大きさは約1.5メートルほどと小型ですが、その性能は折紙付きです。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「地球を見る衛星であることと。電波を使って電場で画像化するレーダーの衛星。雲の影響を受けないので、雲があっても撮ることができる。悪天候で撮れるし昼夜問わず撮れるので、いつでも撮ることができる、そういった衛星になります」
開発された衛星は、電波を使い地上を観測します。
その精度は、住宅や車を判別できるレベル。
しかも雲などに妨げられず夜間でも観測が可能なため、災害などの際に威力を発揮するといいます。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「いつでもリアルタイムで状況が分かるとなれば、いまどういった災害状況なのかが分かります」
会社が開発した衛星が今年8月に石川県で起きた豪雨の際に捉えた画像を見ると、夜間にも関わらず川があふれる様子をしっかり捉えていました。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「本当に人命を救助するスピードがよりアップする。そうなると皆さん安心して暮らせる世界になるんじゃないかなと思います」
会社の目標は今後数年でこうした衛星を合計36基打ち上げること。
そうすることで地球上のほぼ全域をリアルタイムで観測することが可能になるといいます。
*****************
そしてこの壮大な計画を支えているのが地元の中小企業です。
福岡県宇美町にあるバネの製造工場では、車のサスペンションから洗濯ばさみのバネまで、大小様々なバネを製造しています。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
Q.一日どれくらいバネを作っているんですか?
「規格品というのは原則ないです。オーダーメードなので、1本から100本、1000本いろんなランクがあるんですけど、要するに受注生産でやるような品物を作っています」
63年続く会社のバネは、1つ1つ職人が手を加えたもの。
精密で頑丈なネジは、顧客から絶大な信頼を得ています。
会社の方針は『頂いた仕事は安易に断らない』こと。
2009年にQPSから人工衛星の部品製造を依頼され、開発に携わりました。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「今回アンテナに使われているバネの模型です」
Q.どの部分がバネなんですか?
「この部分がバネになってます。簡単に言うと、(衛星の部品を持って)こういった状態でたたまれているのがバネのチカラで広がる」
36本のバネは折りたたまれた状態で打ち上げられ、宇宙空間で花が咲いたように開くという仕組みです。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「QPSさんのほうから非常に高い要求をされました。板厚が薄くて、尚且つ4メートルの品物にも関わらず寸法がミクロン単位の数字の要求ということで、それを守るのが非常に難しかった」
中でも一番苦労したのが宇宙空間という過酷な環境への対応です。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「宇宙空間というのは一番高い温度が200℃くらい、零下では50℃くらい。その幅の中で金属が永久歪みを起こさない材料の選定、材質の選定、ここら辺が非常に苦労しました」
一度打ち上げてしまえば取り替えることはほぼ不可能というプレッシャーの中、自分たちがこれまで培ってきたものづくりの技術を結集して最高の部品を作り上げました。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「自分たちが作っているのがこういう素晴らしい業界で使われるというのは非常に我々の物づくりに対する意識をさらに強くさせるものでもあるし、また技術開発に対しても取り組んでいきたいなという思いがあります」
******************
そうした福岡の人々の夢と思いが詰まった『人工衛星』。
12日、ついにロケット、イプシロンで地上を離れました。
しかし、数分後、ロケットは目標姿勢からずれ、地球周回軌道に衛星を投入できないと判断され、打ち上げは失敗しました。
この様子を福岡で見守った大西社長は…
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「まずは3,4号機の結果を知るということと、この先にある5,6号機の打ち上げの成功に向けて進んでいくというところに、いま気持ちを切り替えてやっていこうと思っています」
福岡の企業の英知を結集した人工衛星の開発。
今回は宇宙には届きませんでしたが、今後、宇宙開発はもちろん、さまざまな場面でその知識と技術が生かされることは間違いありません。
この衛星は福岡の企業が共同で開発、まさにチーム福岡で生まれた衛星です。
世界トップクラスの技術が詰め込まれた衛星の実力とは?
12日朝、福岡市内に設けられたパブリックビューイング会場。
服部知事など100人以上が見つめるモニターに映し出されていたのは、JAXAの固体燃料ロケット『イプシロンロケット6号機』です。
このロケットには、福岡のベンチャー企業が地元企業とともに作り上げた小型衛星2機が搭載されています。
午前9時50分過ぎ。
◆打ち上げの瞬間映像
「3、2、1、0」
福岡企業の夢ものせたロケットが打ち上げられました。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「ようやくスタートなので、そのドキドキが勝っていますね」
こう話すのは小型衛星を開発したQPS研究所の大西俊輔社長です。
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打ち上げ6日前、訪れたのは大西社長が率いるベンチャー企業QPS研究所の本社(福岡市)です。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「これがちょうど6分の1スケールの模型で、ここがパラボラアンテナで、ここから電波が出て、地上から跳ね返ったものを受信して画像にする」
九州大学出身でエンジニアでもある大西社長に見せてもらったのは、今回、ロケットに乗せられた人工衛星の模型です。
実際の大きさは約1.5メートルほどと小型ですが、その性能は折紙付きです。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「地球を見る衛星であることと。電波を使って電場で画像化するレーダーの衛星。雲の影響を受けないので、雲があっても撮ることができる。悪天候で撮れるし昼夜問わず撮れるので、いつでも撮ることができる、そういった衛星になります」
開発された衛星は、電波を使い地上を観測します。
その精度は、住宅や車を判別できるレベル。
しかも雲などに妨げられず夜間でも観測が可能なため、災害などの際に威力を発揮するといいます。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「いつでもリアルタイムで状況が分かるとなれば、いまどういった災害状況なのかが分かります」
会社が開発した衛星が今年8月に石川県で起きた豪雨の際に捉えた画像を見ると、夜間にも関わらず川があふれる様子をしっかり捉えていました。
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「本当に人命を救助するスピードがよりアップする。そうなると皆さん安心して暮らせる世界になるんじゃないかなと思います」
会社の目標は今後数年でこうした衛星を合計36基打ち上げること。
そうすることで地球上のほぼ全域をリアルタイムで観測することが可能になるといいます。
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そしてこの壮大な計画を支えているのが地元の中小企業です。
福岡県宇美町にあるバネの製造工場では、車のサスペンションから洗濯ばさみのバネまで、大小様々なバネを製造しています。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
Q.一日どれくらいバネを作っているんですか?
「規格品というのは原則ないです。オーダーメードなので、1本から100本、1000本いろんなランクがあるんですけど、要するに受注生産でやるような品物を作っています」
63年続く会社のバネは、1つ1つ職人が手を加えたもの。
精密で頑丈なネジは、顧客から絶大な信頼を得ています。
会社の方針は『頂いた仕事は安易に断らない』こと。
2009年にQPSから人工衛星の部品製造を依頼され、開発に携わりました。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「今回アンテナに使われているバネの模型です」
Q.どの部分がバネなんですか?
「この部分がバネになってます。簡単に言うと、(衛星の部品を持って)こういった状態でたたまれているのがバネのチカラで広がる」
36本のバネは折りたたまれた状態で打ち上げられ、宇宙空間で花が咲いたように開くという仕組みです。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「QPSさんのほうから非常に高い要求をされました。板厚が薄くて、尚且つ4メートルの品物にも関わらず寸法がミクロン単位の数字の要求ということで、それを守るのが非常に難しかった」
中でも一番苦労したのが宇宙空間という過酷な環境への対応です。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「宇宙空間というのは一番高い温度が200℃くらい、零下では50℃くらい。その幅の中で金属が永久歪みを起こさない材料の選定、材質の選定、ここら辺が非常に苦労しました」
一度打ち上げてしまえば取り替えることはほぼ不可能というプレッシャーの中、自分たちがこれまで培ってきたものづくりの技術を結集して最高の部品を作り上げました。
◆峰勝鋼機 林哲志 会長
「自分たちが作っているのがこういう素晴らしい業界で使われるというのは非常に我々の物づくりに対する意識をさらに強くさせるものでもあるし、また技術開発に対しても取り組んでいきたいなという思いがあります」
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そうした福岡の人々の夢と思いが詰まった『人工衛星』。
12日、ついにロケット、イプシロンで地上を離れました。
しかし、数分後、ロケットは目標姿勢からずれ、地球周回軌道に衛星を投入できないと判断され、打ち上げは失敗しました。
この様子を福岡で見守った大西社長は…
◆QPS研究所 大西俊輔社長
「まずは3,4号機の結果を知るということと、この先にある5,6号機の打ち上げの成功に向けて進んでいくというところに、いま気持ちを切り替えてやっていこうと思っています」
福岡の企業の英知を結集した人工衛星の開発。
今回は宇宙には届きませんでしたが、今後、宇宙開発はもちろん、さまざまな場面でその知識と技術が生かされることは間違いありません。
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