2022/07/25 15:03
少年の心理鑑定人「刑務作業だけでなく治療的アプローチを」 福岡の女性刺殺事件 不定期刑判決を受けて
暮らし
2022/07/25 20:45
2020年に福岡市の商業施設で女性(当時21)が刃物で刺され殺害された事件の裁判員裁判で、福岡地裁は7月25日、17歳の少年(当時15)に対し、懲役10年以上15年以下の不定期刑判決を言い渡しました。
少年の心理鑑定を行い、裁判にも鑑定人として出廷した山梨県立大学の西澤哲教授に話を聞きました。
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Q.今回の判決を受けて
A.複雑な心境です。医療少年院での丁寧な少年の育て直しは必要だと思っているので、私の力不足、説得力がなかったと思う。正直言ってつらい。
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西澤教授は3日間、少年の心理鑑定を行い、裁判の中で次のように主張していました。
<心理鑑定の結果>
1)母親らのネグレクト 性的虐待など劣悪な環境
2)粗暴性の背景には環境因子の影響
3)トラウマに焦点をあてた心理療法で改善の可能性
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Q.少年がこれまでに受けた虐待・成育環境は、かなり重いケースだったか?
A.私は虐待の問題にかかわって40年程度になるが、私の中でも非常に驚くべき程の虐待環境だったと思う。
Q.最も印象に残っている少年のしぐさや言葉は?
A.少年はコロコロ態度が変わる。おそらく自分の中で自分がまとまりきっていない状態。「クズはクズのまま変わらない」と思っている少年と、絶対に変わらなきゃいけないという少年は、両方とも本当の少年。その部分がまとまっていないのが一番の大きな問題で、その背景に壮絶な虐待環境があったと理解している。
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<少年の経歴>
小3 他の児童の首を絞めるなど → 精神科病院に入院
小4 当時の担任「少年は学校教育の限界を完全に超えていた」
小5 兄とのけんかに包丁を使う → 児童自立支援施設など転々
中1 少年院に入所
中3 少年院を仮退所 → 更生保護施設を翌日脱走
2020年8月 事件発生
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Q.裁判所は少年の生い立ちを加味した上で、「小学5年生以降は施設に入り虐待環境ではなかったので、成育歴の環境を考慮するには限界がある。残虐で凶悪な犯行で保護処分の相当性はない」と判決理由で述べたが?
A.少年は小学校5年生までそういう家庭環境にさらされ続けた。保育園も学校も家庭環境に深刻な問題を抱えていたことは認識していたが、結果的に小5まで放置したことになり、少年が抱えるダメージが大きくなった。最初の家庭からの分離は精神科病院だが、精神科といっても大人の精神科。小児精神科という専門のないところで、まずボタンの掛け違いが起こった。裁判所は「(小5以降は)虐待環境にない」と言っているが、それは当たり前の話。虐待環境で被った被害をどういう風にケアするかという観点で見ると、まったくケアされていない。家庭から分離されてさまざまな機関に行っているが、そこで適切な治療を受けていないのが実態だったと思う。
Q.仮に判決が確定した場合、少年は刑務所に入り刑務作業を行うことになる。今後、少年に対してどのようなフォローが必要になるか?
A.刑務作業によって更生する、というのはあり得ない。刑務作業自体を否定するものではない。少年に対する治療的アプローチが絶対に必要。少年の年齢(17)を考慮すると、たとえば15年の刑で32歳で社会復帰することになる。それからの人生の方が長い。少年が刑務所にいる間に、刑務だけでなく治療を受けられる環境を整えることが社会として責任があると思う。
少年の心理鑑定を行い、裁判にも鑑定人として出廷した山梨県立大学の西澤哲教授に話を聞きました。
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Q.今回の判決を受けて
A.複雑な心境です。医療少年院での丁寧な少年の育て直しは必要だと思っているので、私の力不足、説得力がなかったと思う。正直言ってつらい。
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西澤教授は3日間、少年の心理鑑定を行い、裁判の中で次のように主張していました。
<心理鑑定の結果>
1)母親らのネグレクト 性的虐待など劣悪な環境
2)粗暴性の背景には環境因子の影響
3)トラウマに焦点をあてた心理療法で改善の可能性
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Q.少年がこれまでに受けた虐待・成育環境は、かなり重いケースだったか?
A.私は虐待の問題にかかわって40年程度になるが、私の中でも非常に驚くべき程の虐待環境だったと思う。
Q.最も印象に残っている少年のしぐさや言葉は?
A.少年はコロコロ態度が変わる。おそらく自分の中で自分がまとまりきっていない状態。「クズはクズのまま変わらない」と思っている少年と、絶対に変わらなきゃいけないという少年は、両方とも本当の少年。その部分がまとまっていないのが一番の大きな問題で、その背景に壮絶な虐待環境があったと理解している。
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<少年の経歴>
小3 他の児童の首を絞めるなど → 精神科病院に入院
小4 当時の担任「少年は学校教育の限界を完全に超えていた」
小5 兄とのけんかに包丁を使う → 児童自立支援施設など転々
中1 少年院に入所
中3 少年院を仮退所 → 更生保護施設を翌日脱走
2020年8月 事件発生
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Q.裁判所は少年の生い立ちを加味した上で、「小学5年生以降は施設に入り虐待環境ではなかったので、成育歴の環境を考慮するには限界がある。残虐で凶悪な犯行で保護処分の相当性はない」と判決理由で述べたが?
A.少年は小学校5年生までそういう家庭環境にさらされ続けた。保育園も学校も家庭環境に深刻な問題を抱えていたことは認識していたが、結果的に小5まで放置したことになり、少年が抱えるダメージが大きくなった。最初の家庭からの分離は精神科病院だが、精神科といっても大人の精神科。小児精神科という専門のないところで、まずボタンの掛け違いが起こった。裁判所は「(小5以降は)虐待環境にない」と言っているが、それは当たり前の話。虐待環境で被った被害をどういう風にケアするかという観点で見ると、まったくケアされていない。家庭から分離されてさまざまな機関に行っているが、そこで適切な治療を受けていないのが実態だったと思う。
Q.仮に判決が確定した場合、少年は刑務所に入り刑務作業を行うことになる。今後、少年に対してどのようなフォローが必要になるか?
A.刑務作業によって更生する、というのはあり得ない。刑務作業自体を否定するものではない。少年に対する治療的アプローチが絶対に必要。少年の年齢(17)を考慮すると、たとえば15年の刑で32歳で社会復帰することになる。それからの人生の方が長い。少年が刑務所にいる間に、刑務だけでなく治療を受けられる環境を整えることが社会として責任があると思う。
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