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福岡地裁「命救えた可能性あった」 1歳児エアガン虐待死 父親に懲役16年判決

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2023/02/09 17:50

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福岡県田川市で当時1歳の男の子がエアガンで虐待され死亡した事件で、父親に判決です。

福岡地裁は、被告の父親に検察の求刑通り懲役16年を言い渡しました。

初公判の時と同様、全身黒ずくめの服装で法廷に現れた男。

保護責任者遺棄致死などの罪に問われている田川市の常慶雅則(じょうけい・まさのり)被告(27)です。

9日、注目の判決が言い渡されました。

◆裁判長
「主文、被告人を懲役16年に処する」

◆記者リポート(2019年11月、田川警察署)
「午前8時前です。常慶容疑者の身柄が検察庁に送られます」

判決によりますと、常慶被告は2018年、田川市の自宅で三男・唯雅ちゃん(当時1)に向けてエアガンを至近距離から何度も撃ちケガをさせたほか、妻の藍(あい)受刑者(27)と共謀し、重度の低栄養状態だった唯雅ちゃんに適切な治療を受けさせず肺炎で死亡させました。

唯雅ちゃんは体脂肪がほとんどなく、極度に痩せていました。

さらに、全身にはエアガンで撃たれた合計71カ所の弾の痕があり、両手両足や肋骨は23本、あわせて31カ所も折れていました。

唯雅ちゃんが亡くなってから約4年経ち、1月16日から始まった常慶雅則被告の裁判。

初公判で、裁判長から起訴内容について尋ねられた常慶被告は―

◆裁判長
「公訴事実について何か意見はありますか?」
◆常慶被告
「違います」

常慶被告は早口で起訴内容を否認。

自身の「潔白」を主張しました。

さらに、被告人質問で常慶被告は―

<被告人質問(1月20日)>
◆弁護側
「傷害・保護責任者遺棄致死の全体について質問に答えていただけますか?」
◆常慶被告
「お話ししません」

◆弁護側
「自宅から押収されたエアガンについて、何か私が聞いたときにお答えいただけますか?」
◆常慶被告
「お話ししません」

◆弁護側
「過去に使用していたエアガンについて、お話していただくことはありますか?」
◆常慶被告
「お話ししません」

◆弁護側
「(唯雅ちゃんの)けがの状態について」
◆常慶被告
「お話ししません」

◆弁護側
「(唯雅ちゃんの)体重の推移について」
◆常慶被告
「お話ししません」

◆弁護側
「(唯雅ちゃんが)低栄養状態にあったということについて」
◆常慶被告
「お話ししません」

常慶被告は、弁護側からの質問に対して淡々とした様子で全て「お話ししません」と回答。

さらに、裁判長からの問いかけについても―

◆裁判長
「話したいこともない?」
◆常慶被告
「お話ししません」

◆裁判長
「話したいことがあるけど話さないということ?」
◆常慶被告
「お話ししません」

常慶被告は実に25回以上に渡って「お話ししません」を繰り返しました。

被告人質問はわずか15分で終了しました。


1月25日の論告求刑公判で、検察側は「苦しむ被害者に救いの手を差し伸べず放置したのは極めて悪質で残虐」「被害者が感じた身体的、精神的苦痛は大きく痛ましい」などとして、常慶被告に懲役16年を求刑していました。

一方、弁護側は証明に足る証拠が無いとして無罪を主張しました。

2月9日に開かれた常慶被告の判決公判。

福岡地裁の冨田敦史裁判長は「犯行に及んだのは他ならぬ被告人」として、常慶被告側の無罪主張を退け、検察側の求刑通り懲役16年の判決を言い渡しました。

判決の理由について冨田裁判長は―

◆冨田敦史 裁判長
「瀕死の状態になっても医療措置を受けさせないばかりか、エアガンで虐待」
「被害者への悪感情を見て取れる」
「虐待の発覚を恐れて医師に連れて行かなかった。不保護を継続したことも見られる」
「11月28日(唯雅ちゃん死亡3日前)までに医師の診察を受けさせていたら、命を救えた可能性があった」
「本来頼るべき両親から保護を受けられなかった、辛く悲しい気持ちは計り知れない」

判決を聞きながら、常慶被告は落ち着いた様子で裁判長の方をじっと見つめていました。

閉廷後、裁判員が会見し、今回の判決に至った思いを語りました。

◆裁判員
「隠したいのかなと言うのが一番。親としての自覚がなくて、自分が一番かわいかったのかなと思った」

◆裁判員
「何も二人の口から聞けなかったことで難しかった。自分の子どもを失った悲しさを少しも見せてもらえなかったことに残念だと感じた」

弁護側は控訴するかについて明らかにしていません。

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