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「ガイジン多い」と客から心ない言葉も 外国人タクシードライバー、偏見や制度の壁に直面し奮闘 #マイノーマル

暮らし

2時間前

福岡市内を快走するタクシーのハンドルを握るのはパキスタン出身のアハメド・シャキールさん(53)。

彼が勤務するのは所属する運転手の半数近くが外国人というユニークなタクシー会社。流ちょうな日本語で客には応対する一方で、時には「最近ガイジン多いよね」と不満げに当たられることも…。

深刻な人手不足と高齢化に悩むタクシー業界で偏見や制度の壁に直面しながらも、高い志で運転する彼らの奮闘と現場の実態に迫る。

ハンドルを握るパキスタン出身のドライバー






「平尾小学校まで。わかります? とりあえず信号を左に行ってもらって…」
「はい、わかりました」

道端で手を挙げた客を乗せ、車内で流ちょうな日本語で応対するパキスタン出身のアハメド・シャキールさん(53)。

日本在住歴は20年を超えるが、ドライバー歴はまだ2年ほどだ。

車を走らせている最中、客との会話が出身地やこれまでの仕事の話題になるのがお決まりだ。
「前は何をされていたんですか?」
「エンジニアでした。23年間働いていました」
「機械のエンジニアですか?」
「パキスタンの大学を卒業して、マレーシアにある日本の会社で働いて。それから日本に来てずっとです」
「すごいですね!」

乗客との何気ない日常のやり取りだが、彼が勤務するタクシー会社は、業界内でもユニークな存在だ。


外国人ドライバーが売上トップ20を席巻






シャキールさんが働くのは、福岡市東区にある「東栄タクシー」。

同社は外国人を積極的に採用しており、所属する運転手57人のうち半数近い27人が外国人ドライバーだ。

そのルーツはアジア、中東、ヨーロッパ、アフリカなど17カ国に及び、社内ミーティングを開けば、日本語による業務連絡のすぐ後に英語の通訳の声が響き渡る。

慢性的な人手不足に悩むタクシー業界にあって、日本人のドライバーがなかなか集まらない中、外国人は独自のネットワークで「あそこで働けるらしい」「稼げると聞いた」とやって来ることが多く、結果的に外国人が増えたという。

さらに驚くのは、彼らの“実績”だ。ある月の社内売り上げランキングでは、トップ20のほとんどを外国人ドライバーが占めた。1カ月で70万~100万円前後を稼ぎ出す運転手も少なくないという。




同社の中里裕貴取締役は、彼らへの信頼をこう語る。

「言葉の壁や文化の違いを乗り越えて、本当によくやってくれている。何より『稼ぎたい』という熱意が強いんです。その上で『会社に迷惑をかけない、事故を起こさない』とお互いに声を掛け合ってくれているので、本当に助かっています」

中里さんによると、外国人ドライバーは日本人より比較的年齢が若く、熱意もあり、自身の在留資格にも響くため、運転や接客も丁寧だという。

福岡市内のタクシー稼働率は6割程度とされる中、東栄タクシーは9割を超えており、外国人ドライバーは経営的にもなくてはならない存在だ。

試験は「6回くらいチャレンジ」






マレーシアの日本企業を経て、25年前に来日したシャキールさん。パキスタンから妻を呼び寄せ、3人の子供に恵まれた。

10年ほど前に帰化して長年勤めた企業を退職した後、東栄タクシーのSNSで外国人ドライバーが活躍しているのを知り、直接問い合わせたという。

ドライバーを志した理由は「頑張れば給料がいいから」。3人の子供は専門学校生、高校生、小学生とまだまだ教育費がかかる世代。愛する家族を養うためのシンプルで力強い決断だった。しかし、タクシードライバーとして必要な第二種運転免許の取得は高い壁だった。

「学科のペーパーテストが難しくて、全然問題がわからない。6回くらいチャレンジして、ようやく合格しました」

苦労して手に入れた現在の仕事。シャキールさんは「慣れたら本当に気持ちいい」と笑顔を見せるが、外国人ドライバーならではの「光と影」にも直面している。

外国人ドライバーならではの「光と影」






この日、車に乗り込んできたのは韓国からの家族連れ。

日本語が少しわかるという乗客に対し、シャキールさんは「私がいつも行く『資(すけ)さんうどん』、おいしいですよ」と気さくに話しかけた。家族連れがスマートフォンで店を検索し、「うんうん、あるある!」と笑顔を見せる。

日本で、パキスタン出身のドライバーが、韓国人観光客に福岡のソウルフードを勧める――車内はにわかに、国境を超えたダイバーシティな空間へと変わる。

一方で、理不尽な現実に直面することも少なくない。

地元の男性客を乗せてカーナビ通りのルートを走っていると、「なんで右に曲がるん!まっすぐ行った方が早い!」と強い口調で注意を受けた。

シャキールさんがパキスタン出身だと伝えると、男性客は「最近ガイジン多いよね」と不満げにこぼし、車内は重苦しい雰囲気に…。

目的地に到着し、丁寧に乗客を見送ったシャキールさんは、「Oh my gosh...(やれやれ)」と小さくため息をついた。

「しょうがない。こういう人は10人中1人くらい。残りの9人は本当に優しいですよ。気にしたらストレスが溜まるから、そういう人がいたらもう忘れる!次の人が絶対にいい人だから」。

宗教や文化を尊重する会社の「当たり前」






客からの心ない言葉を受け流しながら、神経をとがらせて安全運転を続けなければならないドライバーたち。中里さんは「この仕事は結局メンタルが大事。そうしたストレスを取り除くのがぼくたちの仕事です」とケアの重要性を痛感している。

そのため、会社も外国人ドライバーの文化や生き方を尊重する環境づくりを心がけている。その一例が、10人ほど在籍しているイスラム教徒(ムスリム)のドライバーのための「礼拝室」だ。

1日5回のお祈りが欠かせないムスリムにとって、職場にその環境があるかは死活問題だ。そこで会社は仮眠室を礼拝室として開放。バングラデシュ出身のドライバーからは「安心して働けます。中里さんは優しい」と歓迎の声が上がった。

中里さんは、マネジメントの極意をこう明かす。「日本人・外国人だからって差別も住み分けもせず、当たり前のことを普通にやっているだけ。ただ、文化の違いを少しだけ考慮してあげる。それだけで車輪はコロコロとうまく回っていくんです。分からない時は『どうしたらいいの?』と直接聞けば、彼らはちゃんと教えてくれますから」。

外国人ドライバー受け入れは「現場任せ」?






現在、福岡県では第二種運転免許の学科試験を英語や中国語など20の言語で受けられるようになっている。

政府も特定分野で即戦力の外国人材を受け入れる「特定技能」の対象にタクシーなどの「自動車運送業」を追加するなど、外国人ドライバー受け入れに向けた取り組みは進んでいるように見える。

一方で、外国人の増加に対する世の中の不安を受ける形で、政府は外国の運転免許証を日本の免許に切り替える「外免切り替え」の手続きを2025年10月から厳格化した。知識確認は「イラスト付きの10問」から「イラストなしの50問」に変更し、正解率も7割から9割に引き上げられたほか、技能確認では踏切の通過や坂道発進などが追加された。

これにより外免切り替えの合格率は大幅に下がり、中里さんの目には国の政策に一貫性がなく外国人ドライバーの受け入れが「現場任せ」で進んでいるように映る。

中里さんは訴える。「国はやっていることがちぐはぐ。どこまで真剣に考えているのでしょうか、現場の実態を見てほしい」。

※この記事は、テレビ西日本とYahoo!ニュース・LINE NEWSによる連携企画「#マイノーマル」です。働く、学ぶ、暮らす、老いるーー時代や立場で変わる「普通」を見つめ直し、人と人が理解を深める手がかりを探ります。
福岡市内を快走するタクシーのハンドルを握るのはパキスタン出身のアハメド・シャキールさん(53)。

彼が勤務するのは所属する運転手の半数近くが外国人というユニークなタクシー会社。流ちょうな日本語で客には応対する一方で、時には「最近ガイジン多いよね」と不満げに当たられることも…。

深刻な人手不足と高齢化に悩むタクシー業界で偏見や制度の壁に直面しながらも、高い志で運転する彼らの奮闘と現場の実態に迫る。

ハンドルを握るパキスタン出身のドライバー

「平尾小学校まで。わかります? とりあえず信号を左に行ってもらって…」
「はい、わかりました」

道端で手を挙げた客を乗せ、車内で流ちょうな日本語で応対するパキスタン出身のアハメド・シャキールさん(53)。

日本在住歴は20年を超えるが、ドライバー歴はまだ2年ほどだ。

車を走らせている最中、客との会話が出身地やこれまでの仕事の話題になるのがお決まりだ。
「前は何をされていたんですか?」
「エンジニアでした。23年間働いていました」
「機械のエンジニアですか?」
「パキスタンの大学を卒業して、マレーシアにある日本の会社で働いて。それから日本に来てずっとです」
「すごいですね!」

乗客との何気ない日常のやり取りだが、彼が勤務するタクシー会社は、業界内でもユニークな存在だ。


外国人ドライバーが売上トップ20を席巻

シャキールさんが働くのは、福岡市東区にある「東栄タクシー」。

同社は外国人を積極的に採用しており、所属する運転手57人のうち半数近い27人が外国人ドライバーだ。

そのルーツはアジア、中東、ヨーロッパ、アフリカなど17カ国に及び、社内ミーティングを開けば、日本語による業務連絡のすぐ後に英語の通訳の声が響き渡る。

慢性的な人手不足に悩むタクシー業界にあって、日本人のドライバーがなかなか集まらない中、外国人は独自のネットワークで「あそこで働けるらしい」「稼げると聞いた」とやって来ることが多く、結果的に外国人が増えたという。

さらに驚くのは、彼らの“実績”だ。ある月の社内売り上げランキングでは、トップ20のほとんどを外国人ドライバーが占めた。1カ月で70万~100万円前後を稼ぎ出す運転手も少なくないという。
同社の中里裕貴取締役は、彼らへの信頼をこう語る。

「言葉の壁や文化の違いを乗り越えて、本当によくやってくれている。何より『稼ぎたい』という熱意が強いんです。その上で『会社に迷惑をかけない、事故を起こさない』とお互いに声を掛け合ってくれているので、本当に助かっています」

中里さんによると、外国人ドライバーは日本人より比較的年齢が若く、熱意もあり、自身の在留資格にも響くため、運転や接客も丁寧だという。

福岡市内のタクシー稼働率は6割程度とされる中、東栄タクシーは9割を超えており、外国人ドライバーは経営的にもなくてはならない存在だ。

試験は「6回くらいチャレンジ」

マレーシアの日本企業を経て、25年前に来日したシャキールさん。パキスタンから妻を呼び寄せ、3人の子供に恵まれた。

10年ほど前に帰化して長年勤めた企業を退職した後、東栄タクシーのSNSで外国人ドライバーが活躍しているのを知り、直接問い合わせたという。

ドライバーを志した理由は「頑張れば給料がいいから」。3人の子供は専門学校生、高校生、小学生とまだまだ教育費がかかる世代。愛する家族を養うためのシンプルで力強い決断だった。しかし、タクシードライバーとして必要な第二種運転免許の取得は高い壁だった。

「学科のペーパーテストが難しくて、全然問題がわからない。6回くらいチャレンジして、ようやく合格しました」

苦労して手に入れた現在の仕事。シャキールさんは「慣れたら本当に気持ちいい」と笑顔を見せるが、外国人ドライバーならではの「光と影」にも直面している。

外国人ドライバーならではの「光と影」

この日、車に乗り込んできたのは韓国からの家族連れ。

日本語が少しわかるという乗客に対し、シャキールさんは「私がいつも行く『資(すけ)さんうどん』、おいしいですよ」と気さくに話しかけた。家族連れがスマートフォンで店を検索し、「うんうん、あるある!」と笑顔を見せる。

日本で、パキスタン出身のドライバーが、韓国人観光客に福岡のソウルフードを勧める――車内はにわかに、国境を超えたダイバーシティな空間へと変わる。

一方で、理不尽な現実に直面することも少なくない。

地元の男性客を乗せてカーナビ通りのルートを走っていると、「なんで右に曲がるん!まっすぐ行った方が早い!」と強い口調で注意を受けた。

シャキールさんがパキスタン出身だと伝えると、男性客は「最近ガイジン多いよね」と不満げにこぼし、車内は重苦しい雰囲気に…。

目的地に到着し、丁寧に乗客を見送ったシャキールさんは、「Oh my gosh...(やれやれ)」と小さくため息をついた。

「しょうがない。こういう人は10人中1人くらい。残りの9人は本当に優しいですよ。気にしたらストレスが溜まるから、そういう人がいたらもう忘れる!次の人が絶対にいい人だから」。

宗教や文化を尊重する会社の「当たり前」

客からの心ない言葉を受け流しながら、神経をとがらせて安全運転を続けなければならないドライバーたち。中里さんは「この仕事は結局メンタルが大事。そうしたストレスを取り除くのがぼくたちの仕事です」とケアの重要性を痛感している。

そのため、会社も外国人ドライバーの文化や生き方を尊重する環境づくりを心がけている。その一例が、10人ほど在籍しているイスラム教徒(ムスリム)のドライバーのための「礼拝室」だ。

1日5回のお祈りが欠かせないムスリムにとって、職場にその環境があるかは死活問題だ。そこで会社は仮眠室を礼拝室として開放。バングラデシュ出身のドライバーからは「安心して働けます。中里さんは優しい」と歓迎の声が上がった。

中里さんは、マネジメントの極意をこう明かす。「日本人・外国人だからって差別も住み分けもせず、当たり前のことを普通にやっているだけ。ただ、文化の違いを少しだけ考慮してあげる。それだけで車輪はコロコロとうまく回っていくんです。分からない時は『どうしたらいいの?』と直接聞けば、彼らはちゃんと教えてくれますから」。

外国人ドライバー受け入れは「現場任せ」?

現在、福岡県では第二種運転免許の学科試験を英語や中国語など20の言語で受けられるようになっている。

政府も特定分野で即戦力の外国人材を受け入れる「特定技能」の対象にタクシーなどの「自動車運送業」を追加するなど、外国人ドライバー受け入れに向けた取り組みは進んでいるように見える。

一方で、外国人の増加に対する世の中の不安を受ける形で、政府は外国の運転免許証を日本の免許に切り替える「外免切り替え」の手続きを2025年10月から厳格化した。知識確認は「イラスト付きの10問」から「イラストなしの50問」に変更し、正解率も7割から9割に引き上げられたほか、技能確認では踏切の通過や坂道発進などが追加された。

これにより外免切り替えの合格率は大幅に下がり、中里さんの目には国の政策に一貫性がなく外国人ドライバーの受け入れが「現場任せ」で進んでいるように映る。

中里さんは訴える。「国はやっていることがちぐはぐ。どこまで真剣に考えているのでしょうか、現場の実態を見てほしい」。

※この記事は、テレビ西日本とYahoo!ニュース・LINE NEWSによる連携企画「#マイノーマル」です。働く、学ぶ、暮らす、老いるーー時代や立場で変わる「普通」を見つめ直し、人と人が理解を深める手がかりを探ります。

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