工藤会トップ死刑判決から1年(1)“手榴弾” “ロケットランチャー”の街が… 北九州市の変化
暮らし
2022/08/23 20:55
特定危険指定暴力団「工藤会」トップの野村悟被告と、ナンバー2の田上不美男被告。
2人に死刑と無期懲役の一審判決が言い渡されてから2022年8月24日で1年。
全国で初めて暴力団トップに下された死刑判決が地域社会にどんな変化をもたらしたのか、シリーズでお送りします。
1回目は、工藤会の本拠地がある「北九州市」の今です。
********************
◆記者リポート(福岡地裁、2021年8月24日)
「主文後回しです。野村・田上両被告の主文は後回しです。極めて厳しい刑が予想されます」
1年前。
大きな関心を集めた特定危険指定暴力団「工藤会」トップの判決公判。
殺人などの罪に問われた、総裁の野村悟被告とナンバー2・田上不美夫被告に言い渡された判決に、廷内はどよめきました。
◆判決言い渡し
「野村被告を死刑。田上被告を無期懲役とする」
2人が罪に問われたのは、1998年以降、市民を標的にした4つの襲撃事件についてー。
福岡地裁は、野村被告が首謀者、田上被告が犯行の意思決定に関与したと認定しました。
2022年8月24日で判決から1年。
工藤会の“本拠地”である北九州の街は変わり始めています。
JR小倉駅で待ち合わせをしたのは、北九州市の北橋健治市長です。
◆北橋健治市長
Q.変わったことは?
「IT系の企業の進出が続いています。そこにもGMOをはじめ、IT関係の企業が進出していますし、この近くにも日本IBMの進出が決まりましたし」
新たに北九州市に進出する企業が年々増えていて、この1年はIT関連企業20社以上が進出しています。
また、野村被告と田上被告が逮捕された後の2017年、小倉の商業地の地価が24年ぶりに上昇。
それからも価格は上がり続けています。
2022年で就任15年目になる北橋市長自身も街の変化を肌で感じています。
◆北橋健治市長
「(小倉駅には)1カ月とか2カ月置いて来るので、街の変化というのは敏感に感じますね。『街が安全安心になったんだな』というのを感じます。(昔は)北九州ナンバーを見るとみんなが警戒するというような話もありました。でも今や、安全な街になってきたと思います」
北九州の街を脅かしていた工藤会ー。
【TNC「スーパーニュース」2003年8月19日放送】
◆記者リポート
「昨夜8時ごろ、北九州市小倉北区鍛治町の『クラブぼおるど』で、店の従業員の男女10人がやけどなどの重軽傷を負ったものです」
2003年8月、工藤会系の組員が小倉北区の高級クラブに「手榴弾」を投げ込んだいわゆる「ぼおるど事件」。
◆「ぼおるど事件」の被害女性(2021年)
「8時ジャストに急に戸が開いて。男の人が上から下まで黒い感じでズカズカズカって勢いよく入ってきて、『おりゃー』って言って物を投げた」
こう話すのは、当時、店の中にいてけがをした被害者の女性です。
いまも事件がトラウマとなっていますが、トップへの死刑判決などによって気持ちの変化が生まれています。
◆「ぼおるど事件」の被害女性(2022年8月)
「いまはもう安心して(街を)歩ける。警察がすぐに来てくれるという安堵感もありますね」
安堵感を示しつつも、気を緩めてはいません。
◆「ぼおるど事件」の被害女性(2022年8月)
「まだ死刑判決が確定したわけじゃないですから、そこまでの道のりは続いている。まだ戦っている最中じゃないですか」
こうした中、この1年で工藤会の衰退は目に見える形で現れ始めています。
◆記者リポート(2021年10月8日)
「ユニオン田中と書かれた建物の前に鉄パイプなどが積まれたトラックが止まっています。現在、足場の設置作業が進められています」
小倉北区三萩野にある工藤会傘下組織最大・田中組の本部事務所。
この日、建物の解体が始まりました。
「田中組」は、野村被告と田上被告の出身母体で、2人が組長を務めたことがある、工藤会内におけるいわば“有力組織”。
しかし、維持管理費の負担の大きさなどが要因となり、売却せざるを得なくなる状況まで追い込まれてしまいました。
◆住民の女性(2021年10月8日)
「安心ですよね。建っているだけで不気味」
◆住民の男性(2021年10月8日)
「うれしいです。治安が良くなってくれるとすごく助かりますね」
さらにー。
家宅捜索に入った県警の捜査員と組員が取っ組み合いになった小倉北区紺屋町の田中組の事務所。
繁華街の一角にあったこの建物も、解体されました。
長年住民を不安にさせてきた建物が街から消えた、歴史的な1年になったのです。
◆北橋市長
「安全な街にしようと様々な運動を強力に展開した結果、それを達成してきている。安心感というものがいまこの街にあると思います」
着実に”負の遺産”を払拭している北九州市。
最後に、北橋市長が見せてくれたものがー。
◆北橋市長
「希望のまちプロジェクトと、福祉のボランティアの方が呼んでいる模型。あの工藤会総本部事務所の後が、このように生まれ変わるんです」
工藤会の本部事務所跡地に2024年に誕生する予定の社会福祉施設です。
「希望のまちプロジェクト」としてNPO法人の「抱撲」が整備を担い、今年からすでに市民が集う憩いの場として利用されています。
◆北橋市長
「(良いことを)発信することで、昔のロケットランチャーやなんかという街が、やばいと思っていた街がだんだん薄らいでいく。北九州市の強烈な良い印象、まばゆい明るい印象をたくさん発信することで、過去の暗いイメージを払拭していく」
(TNC報道ワイド「記者のチカラ」2022年8月22日放送より)
2人に死刑と無期懲役の一審判決が言い渡されてから2022年8月24日で1年。
全国で初めて暴力団トップに下された死刑判決が地域社会にどんな変化をもたらしたのか、シリーズでお送りします。
1回目は、工藤会の本拠地がある「北九州市」の今です。
********************
◆記者リポート(福岡地裁、2021年8月24日)
「主文後回しです。野村・田上両被告の主文は後回しです。極めて厳しい刑が予想されます」
1年前。
大きな関心を集めた特定危険指定暴力団「工藤会」トップの判決公判。
殺人などの罪に問われた、総裁の野村悟被告とナンバー2・田上不美夫被告に言い渡された判決に、廷内はどよめきました。
◆判決言い渡し
「野村被告を死刑。田上被告を無期懲役とする」
2人が罪に問われたのは、1998年以降、市民を標的にした4つの襲撃事件についてー。
福岡地裁は、野村被告が首謀者、田上被告が犯行の意思決定に関与したと認定しました。
2022年8月24日で判決から1年。
工藤会の“本拠地”である北九州の街は変わり始めています。
JR小倉駅で待ち合わせをしたのは、北九州市の北橋健治市長です。
◆北橋健治市長
Q.変わったことは?
「IT系の企業の進出が続いています。そこにもGMOをはじめ、IT関係の企業が進出していますし、この近くにも日本IBMの進出が決まりましたし」
新たに北九州市に進出する企業が年々増えていて、この1年はIT関連企業20社以上が進出しています。
また、野村被告と田上被告が逮捕された後の2017年、小倉の商業地の地価が24年ぶりに上昇。
それからも価格は上がり続けています。
2022年で就任15年目になる北橋市長自身も街の変化を肌で感じています。
◆北橋健治市長
「(小倉駅には)1カ月とか2カ月置いて来るので、街の変化というのは敏感に感じますね。『街が安全安心になったんだな』というのを感じます。(昔は)北九州ナンバーを見るとみんなが警戒するというような話もありました。でも今や、安全な街になってきたと思います」
北九州の街を脅かしていた工藤会ー。
【TNC「スーパーニュース」2003年8月19日放送】
◆記者リポート
「昨夜8時ごろ、北九州市小倉北区鍛治町の『クラブぼおるど』で、店の従業員の男女10人がやけどなどの重軽傷を負ったものです」
2003年8月、工藤会系の組員が小倉北区の高級クラブに「手榴弾」を投げ込んだいわゆる「ぼおるど事件」。
◆「ぼおるど事件」の被害女性(2021年)
「8時ジャストに急に戸が開いて。男の人が上から下まで黒い感じでズカズカズカって勢いよく入ってきて、『おりゃー』って言って物を投げた」
こう話すのは、当時、店の中にいてけがをした被害者の女性です。
いまも事件がトラウマとなっていますが、トップへの死刑判決などによって気持ちの変化が生まれています。
◆「ぼおるど事件」の被害女性(2022年8月)
「いまはもう安心して(街を)歩ける。警察がすぐに来てくれるという安堵感もありますね」
安堵感を示しつつも、気を緩めてはいません。
◆「ぼおるど事件」の被害女性(2022年8月)
「まだ死刑判決が確定したわけじゃないですから、そこまでの道のりは続いている。まだ戦っている最中じゃないですか」
こうした中、この1年で工藤会の衰退は目に見える形で現れ始めています。
◆記者リポート(2021年10月8日)
「ユニオン田中と書かれた建物の前に鉄パイプなどが積まれたトラックが止まっています。現在、足場の設置作業が進められています」
小倉北区三萩野にある工藤会傘下組織最大・田中組の本部事務所。
この日、建物の解体が始まりました。
「田中組」は、野村被告と田上被告の出身母体で、2人が組長を務めたことがある、工藤会内におけるいわば“有力組織”。
しかし、維持管理費の負担の大きさなどが要因となり、売却せざるを得なくなる状況まで追い込まれてしまいました。
◆住民の女性(2021年10月8日)
「安心ですよね。建っているだけで不気味」
◆住民の男性(2021年10月8日)
「うれしいです。治安が良くなってくれるとすごく助かりますね」
さらにー。
家宅捜索に入った県警の捜査員と組員が取っ組み合いになった小倉北区紺屋町の田中組の事務所。
繁華街の一角にあったこの建物も、解体されました。
長年住民を不安にさせてきた建物が街から消えた、歴史的な1年になったのです。
◆北橋市長
「安全な街にしようと様々な運動を強力に展開した結果、それを達成してきている。安心感というものがいまこの街にあると思います」
着実に”負の遺産”を払拭している北九州市。
最後に、北橋市長が見せてくれたものがー。
◆北橋市長
「希望のまちプロジェクトと、福祉のボランティアの方が呼んでいる模型。あの工藤会総本部事務所の後が、このように生まれ変わるんです」
工藤会の本部事務所跡地に2024年に誕生する予定の社会福祉施設です。
「希望のまちプロジェクト」としてNPO法人の「抱撲」が整備を担い、今年からすでに市民が集う憩いの場として利用されています。
◆北橋市長
「(良いことを)発信することで、昔のロケットランチャーやなんかという街が、やばいと思っていた街がだんだん薄らいでいく。北九州市の強烈な良い印象、まばゆい明るい印象をたくさん発信することで、過去の暗いイメージを払拭していく」
(TNC報道ワイド「記者のチカラ」2022年8月22日放送より)
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