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工藤会トップ死刑判決から1年(3)-2 元“マル暴”刑事が見た「野村被告の恐怖支配」誕生の瞬間

暮らし

2022/08/25 17:00

<前編からの続き>
特定危険指定暴力団工藤会のトップ2人に死刑判決などが言い渡されてから2022年8月24日で1年。元福岡県警のベテラン捜査員が、死刑判決の衝撃、そして知られざる工藤会の内幕を語りました。

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<後編>

◆福岡県警 元捜査員A氏
Q「溝下氏と最後に会ったのは?」
A氏「亡くなる何年か前。病状を確認してくれと県警から依頼があって。裸になって(手術の)傷口を見せてくれて『もう大丈夫だ』と本人は言っていた」

2008年7月、溝下氏が61歳で亡くなりました。溝下氏の葬儀は警察が厳重に警戒する中行われ、全国各地から暴力団関係者が駆け付けつけました。A氏によると、溝下氏の葬儀の数日後、野村被告は「田中新太郎」氏の墓参りに行ったといいます。

◆福岡県警 元捜査員A氏
A氏「昔の田中組の組員たちを連れて行ったと聞いた。“敵討ちの報告”と」
Q「田中新太郎氏が殺されたことについて一切恨みを見せなかったが、その心はまだ残っていたと?」
A氏「ただそれは目の前の恐怖、大きな溝下の影に全部隠していた。亡くなった親分を見た時に『これで完全に俺が北九州の親分だ』という意識になって、本当にこの世から居なくなって、それで本当の自分が出た」

◆末松勝巳組長宅銃撃事件(2008年8月)
記者「ここが銃弾が撃ち込まれた門です。貫通はしなかったものの、大きくへこんでいます」

溝下氏の死後、工藤会では“溝下派”への粛清ともとれる動きが活発になりました。溝下氏に近かった「篠崎一雄」元組長(当時66)は工藤会によって射殺。また、溝下氏の側近だった「江藤允政」元組長(当時65)は引退に追い込まれた後、何者かによって射殺されました。

◆工藤会五代目継承式(2011年7月・北九州市小倉北区)
「押忍!押忍!押忍!」

溝下氏が亡くなってから3年後。野村被告は工藤会トップの総裁の座に座り、ナンバー2の会長には腹心の田上不美夫被告、ナンバー3の理事長には菊地敬吾被告を指名しました。工藤会トップ3が全て田中組出身者という野村被告の独裁体制が確立しました。工藤会はさらに暴走を続けます。

◆元警部銃撃事件(2012年4月)
アナウンサー「北九州小倉南区で元警察官の男性が銃撃されました」

2012年、野村被告は配下に指示し福岡県警の元警部を銃撃。さらに同じ年に工藤会は暴力団員の立ち入り禁止の標章を掲げた飲食店の関係者を次々に襲う事件も起こしました。
捜査関係者によると、野村被告が組織の実権を握った2000年以降、工藤会の犯行とみられる襲撃事件は「113件」発生。そのうち殺人事件は9件、殺人未遂事件19件、発砲事件46件、放火17件、爆発物を使用した事件5件。狙われたのはほとんどが一般の人でした。

◆福岡県警 元捜査員A氏
A「溝下が親分のままおれば、街の小さなスナックのママの顔を切ったり、ああいう事件は起きていないと思う。ここまで北九州は変わっていないと思う」

事態を重く見た国は暴力団対策法を改正。工藤会を全国の指定暴力団の中でも特に凶悪な組織として「特定危険指定暴力団」に指定しました。そしてついに-。

◆野村悟総裁宅家宅捜索(2014年9月)
記者「工藤会のトップ、野村総裁の自宅に警察が強制捜査に入ります」

2014年9月、福岡県警は頂上作戦を開始。野村被告ら工藤会最高幹部を次々に逮捕しました。

◆野村被告判決公判(福岡地裁・2021年8月24日)
記者「野村被告に極刑が言い渡されました」

2021年8月24日、福岡地裁は4つの市民襲撃事件で野村被告の関与を認定。野村被告に死刑、ナンバー2の田上被告に無期懲役を言い渡しました。判決から1年。A氏は野村被告の死刑判決が暴力団社会に与えた衝撃についてこう語ります。

◆福岡県警 元捜査員A氏
A氏「世の中の他の組織の暴力団の親分たちも、“この判決は大変なこと”だと。親分の使用者責任、共謀共同正犯、推認でもっていかれると。全国のヤクザ組織に与えた影響はものすごい」

また工藤会に与えた衝撃については-。

◆福岡県警 元捜査員A氏
A氏「おそらく工藤会のほとんどの組員は『もう辞めたい』と思っている人間がほとんどと思う。みんな心の中でどこかほっとした部分と」
Q「ほっとした、とはどういう意味?」
A氏「これ以上指示がないわけですから、人に対する。だけど判決を受けたということであれ、そこを抜けるということは非常に難しいと思う。一度植え付けた親分に対する恐怖心はぬぐえない。時間がたっても」
Q「野村総裁から逃れられない?」
A氏「そうですね。工藤会の壊滅を目指すなら、それが若い組員たちの為にもなると思う。残しておけばどうしてもその中で縛られる。なんとか壊滅に向けて頑張ってもらいたい」

(以上)

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