2022/12/12 19:10
店がなければ道端でも… 旦過市場2度の火災 再起目指す老舗精肉店 「やっぱりここが好き」 北九州市
暮らし
2022/12/13 14:45
2022年、2度の大規模な火災に見舞われた福岡県北九州市の旦過市場。
多くの店舗が火災による被害を受けた中、市場での再起を目指す老舗精肉店の80代の店主に密着しました。
◆記者リポート(2022年4月)
「停電しました。市場の灯りがすべて消えました」
2022年4月、北九州市の旦過市場一体を襲った火災。
この場所で長い歴史を紡いできた、たくさんの店が焼失しました。
火災から2日後ー
市場の入り口には、被害状況を確認する男性の姿がありました。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん(83)
「もうめちゃくちゃじゃね、思った以上にやられとった」
市場で約70年にわたって精肉店を営んできた、松田角二(まつだ・かくじ)さんです。
松田さんが経営する「戸根食肉」は全焼でした。
焼け跡の前で厳しい表情を浮かべながらも、涙を浮かべる従業員を気遣い、営業再開の目処がたたない中でも笑顔を絶やすことはありませんでした。
その後も松田さんは毎日、市場に足を運びました。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「人の流れなどを見るのが楽しみ。本当人生そのもの。ここにずっとおったら満足なんよ」
店があった場所に立つバリケードを眺めていると、常連客や取引先の人が声をかけてきます。
◆常連客
「みんな言いよるんよ、困っとるって」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「みんな言いよった?」
◆常連客
「はよ再開できんかねえ」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「できますよー!」
◆常連客
「がんばろうやね、待っとるけえね。」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「やります!」
◆常連客
「お願いします!」
店の再開を待ち望む声が聞かれる中、がれきの撤去作業も始まりました。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「一歩ずつ、一歩ずつ。もうひと踏ん張りやないよ、ふたつもみっつも踏ん張らないかん。ここでやるからこそええんよ。アイラブ旦過よ!」
自分を育ててくれたこの場所でもう一度、店を構えたい。
バリケードの隙間から、営業再開を思い描いていたそんな矢先でしたー。
2022年8月、旦過市場を襲った2回目の火災。
店の跡地にはまた、大量のがれきが積まれていました。
1回目の火災後、毎日、姿を見せていた松田さんの足も、市場から遠のいていきました。
2度目の火災から約2カ月がたった10月。
松田さんと従業員たちの姿は、市場近くのラーメン店にありました。
50年以上取引があるというラーメン店で行われていたのは、営業再開に向けての会議。
2度目の火災で予定は狂いましたが、「戸根食肉」は早期の営業再開に向けて歩みを止めてはいませんでした
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「言われるよみんなから、『なにしよんかね!』『いつするん』って。お客さんが待ってるから早くしてくれって。そんな単純な問題やない」
再建へ向けて話し合いを続ける中、松田さんの足は、おろし業者の元へ。
道ばたでの取引です。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「ヤミで売り買いしよるようなもんやね」
大きなヒレ肉を購入した松田さん。
段ボールを抱えて向かった先は、旦過市場近くの鉄板焼店でした。
すると松田さん、調理場へと入っていきました。
◆鉄板焼 en
「(松田さんが)切ってくれると、やっぱり売れるんですよ。僕が切るとあんまり売れないんですよ」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「気持ちがええ!気持ちがええ!」
いつも周りを笑わせ、笑顔が絶えない松田さん。
口ではおどけながらも、肉と向かいあえば、その表情は真剣そのもの。
丁寧にスジや脂を取り除いていきます。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「再開しだしたら、こんなに大きいやつがくるからね。持ちきれないからね」
営業再開に向けてー
包丁を持つ頻度は減りましたが、松田さんの腕は健在。
あとは、元の場所に店を構えるだけです。
焼け跡に、活気が戻ってきていた2022年12月、市場に松田さんが訪れていました。
ブルーシートの合間から入っていったのは、戸根食肉の跡地。
そこに、がれきはありません。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「ここ?ここは肉屋や!私の店ができるんです」
建設されていたのはプレハブ店舗。
一刻も早く「戸根食肉」を再開するため、突貫での工事が始まっていたのです。
ここは冷蔵庫、ここにはショーケース。
新たな店の姿を思い浮かべます。
◆従業員
「でもなんかほっとするね、光が見えたような気がするね。ボーっとしとらんよ!ボーっと!」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「おー、今ボーっとしよった…」
◆従業員
「建物はあるけど、道具無かったらはじめられんのやけさ」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「やかましいよ!」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「やっぱりね、ここがほんとに好きなんよ。ここ行き交う人も好きやし、顔なじみもだいぶおるしね。60年ぐらいになるしね、アイラブ旦過です」
1度目の火災から間もなく8カ月。
松田さんの歩みは、速度を上げて進んでいます。
多くの店舗が火災による被害を受けた中、市場での再起を目指す老舗精肉店の80代の店主に密着しました。
◆記者リポート(2022年4月)
「停電しました。市場の灯りがすべて消えました」
2022年4月、北九州市の旦過市場一体を襲った火災。
この場所で長い歴史を紡いできた、たくさんの店が焼失しました。
火災から2日後ー
市場の入り口には、被害状況を確認する男性の姿がありました。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん(83)
「もうめちゃくちゃじゃね、思った以上にやられとった」
市場で約70年にわたって精肉店を営んできた、松田角二(まつだ・かくじ)さんです。
松田さんが経営する「戸根食肉」は全焼でした。
焼け跡の前で厳しい表情を浮かべながらも、涙を浮かべる従業員を気遣い、営業再開の目処がたたない中でも笑顔を絶やすことはありませんでした。
その後も松田さんは毎日、市場に足を運びました。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「人の流れなどを見るのが楽しみ。本当人生そのもの。ここにずっとおったら満足なんよ」
店があった場所に立つバリケードを眺めていると、常連客や取引先の人が声をかけてきます。
◆常連客
「みんな言いよるんよ、困っとるって」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「みんな言いよった?」
◆常連客
「はよ再開できんかねえ」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「できますよー!」
◆常連客
「がんばろうやね、待っとるけえね。」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「やります!」
◆常連客
「お願いします!」
店の再開を待ち望む声が聞かれる中、がれきの撤去作業も始まりました。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「一歩ずつ、一歩ずつ。もうひと踏ん張りやないよ、ふたつもみっつも踏ん張らないかん。ここでやるからこそええんよ。アイラブ旦過よ!」
自分を育ててくれたこの場所でもう一度、店を構えたい。
バリケードの隙間から、営業再開を思い描いていたそんな矢先でしたー。
2022年8月、旦過市場を襲った2回目の火災。
店の跡地にはまた、大量のがれきが積まれていました。
1回目の火災後、毎日、姿を見せていた松田さんの足も、市場から遠のいていきました。
2度目の火災から約2カ月がたった10月。
松田さんと従業員たちの姿は、市場近くのラーメン店にありました。
50年以上取引があるというラーメン店で行われていたのは、営業再開に向けての会議。
2度目の火災で予定は狂いましたが、「戸根食肉」は早期の営業再開に向けて歩みを止めてはいませんでした
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「言われるよみんなから、『なにしよんかね!』『いつするん』って。お客さんが待ってるから早くしてくれって。そんな単純な問題やない」
再建へ向けて話し合いを続ける中、松田さんの足は、おろし業者の元へ。
道ばたでの取引です。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「ヤミで売り買いしよるようなもんやね」
大きなヒレ肉を購入した松田さん。
段ボールを抱えて向かった先は、旦過市場近くの鉄板焼店でした。
すると松田さん、調理場へと入っていきました。
◆鉄板焼 en
「(松田さんが)切ってくれると、やっぱり売れるんですよ。僕が切るとあんまり売れないんですよ」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「気持ちがええ!気持ちがええ!」
いつも周りを笑わせ、笑顔が絶えない松田さん。
口ではおどけながらも、肉と向かいあえば、その表情は真剣そのもの。
丁寧にスジや脂を取り除いていきます。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「再開しだしたら、こんなに大きいやつがくるからね。持ちきれないからね」
営業再開に向けてー
包丁を持つ頻度は減りましたが、松田さんの腕は健在。
あとは、元の場所に店を構えるだけです。
焼け跡に、活気が戻ってきていた2022年12月、市場に松田さんが訪れていました。
ブルーシートの合間から入っていったのは、戸根食肉の跡地。
そこに、がれきはありません。
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「ここ?ここは肉屋や!私の店ができるんです」
建設されていたのはプレハブ店舗。
一刻も早く「戸根食肉」を再開するため、突貫での工事が始まっていたのです。
ここは冷蔵庫、ここにはショーケース。
新たな店の姿を思い浮かべます。
◆従業員
「でもなんかほっとするね、光が見えたような気がするね。ボーっとしとらんよ!ボーっと!」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「おー、今ボーっとしよった…」
◆従業員
「建物はあるけど、道具無かったらはじめられんのやけさ」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「やかましいよ!」
◆戸根食肉 店主 松田角二さん
「やっぱりね、ここがほんとに好きなんよ。ここ行き交う人も好きやし、顔なじみもだいぶおるしね。60年ぐらいになるしね、アイラブ旦過です」
1度目の火災から間もなく8カ月。
松田さんの歩みは、速度を上げて進んでいます。
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